2019年の良かったテレビアニメ ~「他所に出すのはちょっと恥ずかしい」を信じる~

バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~

TCG世界観スピンオフアニメでまさか「仲良し田舎娘グループ(+都会から落ち延びてきたアイドル)が廃墟となった映画館を復興するために奮闘する」なんてモチーフが展開されるとは。
その他「記憶との対峙」「映画作り」などなど、今どきやっても単に「それっぽいだけ」「やってみただけ」に終わりかねないモチーフを扱い続けながらどのエピソードもその水準には留まらなかった。緩そうに見えて一定の緊張感が常に漂うアンビバレントな演出、新しい声優、抑制されたBGMがそれっぽいモチーフを扱われた時に否応なく上がるこちらのガードを解放。賛否両論(というかほとんど否…自分は好きだぞ)のキャラデザも、たぶんそれに貢献していたのだ。

放送中から流れて(掲示されて)いたヴァンガードのCMや山手線の駅広告は「彼女らはいずれアイドルになる」という現実を「(我儘ながら)正直このままでいて欲しい派」に容赦なく叩きつけてきたが、戻らない日々の輝きを切り取った映像だからこそ尊い本編と思うことにしよう。なんだかんだでいつか故郷に帰って日が来るかもしれないことを、作中の大人たちの有り様が示してもいるし。

ぱすてるメモリー

絶版コミックを探すこと(日常)と作品世界に入って冒険が出来ること(視聴者にとっては非日常だが彼女らにとっては日常)をフラットに「彼女らの日常」として演出した、「何か凄い事が始まる式」ではない語り始めの流儀を見せた1話は今年のアニメの1話で一番好きかもしれない。
澄み切った水のような1話に対しその後のコンセプトにはひっくり返ったが、単なるリスペクトとは違う方向の猥雑なパロティの流儀を見せてくれた。総じて「もうひとつの流儀」を見せてくれるアニメだったと言えよう。パロディの対象が単一の作品からあるジャンル広がった後半のノリでもっと見たかったかも。
忘れてはいけないのはエロカッコいいEDアニメーション。現状でもエロカッコいいが、担当アニメーターの同人誌にはもっとゴージャスなEDになる構想(コンテ)が。想定通り出来てたらどうなってたんだろう…。

叛逆性ミリオンアーサー

「実在性」(実写)「弱酸性」(ショートアニメ)とヤバい映像化作品を次々と送り出してきたミリオンアーサーがついに送り出した30分枠TVアニメ(普通これが最初では)。
前2つがパッと見で尖り過ぎていてこの「叛逆性」はいまいち世間では評価され難い向きがあるが、筆者は「叛逆性」によってミリオンアーサーが三冠を達成したことをここに宣言したい*1
個人的にアクア様を上回った雨宮天キャラ、団長こと団長アーサーが筆をへし折られたBL創作女子に「これからはそんなもので倒錯の変態世界に逃げ込まないで、全うな愛を育んでね☆」といまどき完全アウトなセリフを言い放つが言ってる奴が「お前が言うな」な大変態だからオッケーみたいな(5話)、お互いを認め合う事より無邪気に殴り合った結果として多様性が肯定される饗宴(カーニバル)感にフィクションの底力を見た。

あかほりアニメの血脈を受け継ぐスタッフも大きく関わり、「完成/未完成」「洗練/未洗練」どうこう以前に我々が時代の彼方に葬り去ってしまった(恥ずかしくて)ある種のアニメ活劇を、「恥ずかしいからどうだってんだ」とばかりに今ここに完成させた趣がある。

超可動ガール 1/6

良く出来てるモデリング&アクションに加えてあまりにまっとうにまっとうな「オタクネタ交えたSF」してて関心させられてしまった。とはいえ今どきオタクの欲望の表現としてもちょっと古さを感じさせる構図がベースにあるこのアニメ、ちょっと他所に出すのは恥ずかしいような…何せ他所に出しても恥ずかしくない(らしい)アニメには事欠かないご時世だ。
でもな、「まっとうだけど他所に出すのはちょっと恥ずかしいけどまっとう」…それが「オタクの本格(美少女)SF」って事だろ?ふたばにめ枠のアニメはどれもこの「他所に出すのは恥ずかしい」精神を保持しており好感が。ノーナのキャスティングもこれしかない感じで良かった。

ひとりぼっちの〇〇生活

あの三ツ星カラーズと同じ原作者の漫画が今年もアニメ化。だからってまた大傑作って事が果たしてあるだろうか…と身構えていたが杞憂に終わった。
話がどんなに情感的になっても、「アルちゃんいつ頭突き出すんだ…」みたいなアクション×サスペンスにピークポイントを持っていく所が多くのきららアニメに馴染めない自分でも好きになれる要因かも。

Re:ステージ! ドリームデイズ

星の数ほど生まれているアイドルアニメの後発組としては「アイドル事変」「音楽少女」のような野心のギラつくつくりでは決してない。ストレンジなネタも仕込んであれど、それだけをとってみれば数々の先達のものほど尖ったものではないような気もしてしまう。
要素ひとつひとつを点検するように振り返ると後発組としては致命的な「いたって普通」感に彩られているように思えてしまうこのアニメはしかし、守りに入った窮屈さとは無縁のエナジーを持っている。尖ったアピールポイントよりも「見ている間だけ捉える事が可能な、あるバランス感覚」(と、見守っているとクセになってくるみい先輩)で勝負しているかのような作品。アニメの最先端は何も尖った形をしてだけ現れるのではなく、こんな形をして現れるのかもしれない。

どるふろ 癒やし篇

なんか突如として放送されている感のあるドールズフロントラインのショートアニメ。あまりに突如過ぎて「実質ハオライナーズなんだから見なきゃダメだろ」との知り合いからの指摘がなければ見逃すところだった。
海外アニメらしい垢抜け過ぎない遊び心が画面に生きている、ほっこり楽しいショートアニメ。アリス・イン・ワンダーランドフォームをショートアニメで最大限展開したオタクシュルレアリスムな6話など必見。視聴方法が限られ過ぎているのが惜しい。
スタッフに加えスポットの当たるキャラも違う第2シリーズ「狂乱篇」が現在放送中で、いい感じに統一感があり過ぎない自在なデフォルメ作画と毎回違うEDアニメーションで楽しませてくれるのでこちらも必見。

その他

「サークレットプリンセス」は「今どきこのノリ」と水橋かおり成分を補給するという一定の役割を果たしていった。
シンフォギアXV」の序盤は調ちゃんのY字投球フォームとか序盤はGX(3期)以来の楽しさ。後半に関しては、こちら側と敵幹部陣と実はそのバックにいた黒幕の葛藤とか思惑とか悲哀を1クールに全部詰め込もうというのにやっぱり無理がある(「手続き感」が加速)と3期以降ずっと思ってる。

「慎重勇者」は画で頑張らないとどうにもならなそうなものを画で頑張ってどうにかした、コミカル作画技術の粋を集めたアニメ。急発進で目だけ置いてかれる演出とか今日日ひさびさ見た。

余談

その時その時の気分のようなものも大切にしているので良いと思ったアニメを選ぶと毎回一貫性があるんだかないんだかよく分からないラインナップが出来上がるが、強いて言えば「他所に出すのはちょっと恥ずかしい」…超可動ガール1/6の項で使ったこのワードが持つ精神は、自分が今年良いと思ったアニメ群を多かれ少なかれ貫いているのではないだろうか。
「他所に出しても恥ずかしくない」ものが追求される、或いは、「他所に出したら恥ずかしい皮を被った実のところ他所に出しても恥ずかしくないように適度に調整されている」もの(面倒くさい)が表通りを闊歩している中、見失っていた「他所に出すのはちょっと恥ずかしい」と隣り合わせの活力を持った作品がまだ息づいている…そんなイメージでアニメを見てみた時にこそ輝き始める作品に身を任せてみた。と、今年の「気分」に後付けで形を与えてみると、そういうことになるかもしれない。

*1:1シーズンおいての分割2クールで今年やったのは2クール目の方だが1クール目もまとめてここで評価