2020年のテレビアニメ感想


2020年に見たテレビアニメの中から、「面白かったアニメ」と「イマイチだった(ものによっては全部見てない)けど書くこと思いついた」作品について書いてみたい。
なお参考までに

2010年代の傑作は絶対防衛レヴィアタンファンタジスタドール・幕末義人伝 浪漫

 

2018年の良かったアニメは三ツ星カラーズ・音楽少女ほか

 

ribknit.hatenablog.com

 

2019年の良かったアニメは叛逆性ミリオンアーサー・バミューダトライアングルほか 

ribknit.hatenablog.com

 

 と、なっております。では。

どるふろ狂乱編

 癒やし編から続いて放送のショートアニメ。癒やし編からしてあまり話題になっていなかったが、狂乱編では癒やし編のシュールテイストも消え去り、余計に話題にならなくなった印象。

 しかし、ギャグ/コミカル作画・演出の練度では癒やし編に勝るとも劣らない良作。リアル日常芝居と超絶バトル作画以外も話題にして欲しいと心から願う。まあ後半は日本人には分からないギャグなのか単にギャグとして成立していないのか区別がつかない部分が多かったけど。

 毎回違ったショートアニメが流れるエンディング(ループ系をメインとして、1回ただの原作の衣装宣伝アニメだったのも面白かった)が良くて、定期的に繰り返して見てました。

プランダラ

 「こんなアニメ俺以外誰が見るんだ」感を、世界で自分だけが大好きな銀の墓守り(1期)のキャラデザの人が作画にメインで入っている事が加速させていく作品だったが、途中で挫折してしまって申し訳ない。2クールあったというのが凄いし、スケベ観念がひたすら時代錯誤なのにエロ画面の露出度はストイックというバランスも凄い。

 

 はてなイリュージョン

 スーパーアニメーター松尾慎氏(ラムネ&40炎のOPとか。ロボットアニメで名前を拝見することが多い)がここにきて初監督。
 原作が同じメルヘン・メドヘンはまだ「多人数チームバトルとかジュブナイルテイストとかファンタジスタドールに近い部分が所々あるから同じスタッフでアニメ化して…」みたいな企画の意図が推測出来たが、これに関してはもう何でこれをアニメにしたのかもそれがスーパーアニメーターの初監督作になるのかも分からないし、それでいて1話の(一般的にゴージャスさとは捉えられにくい)半端ではないゴージャスな画づくりといい、そのあまりのよく分らなさに応援せざるを得ないという決意を開幕で固くした。

 が、その後画面は壊れ気味で、終わってみると「いや、なんだったんでしょう?」としか言いようがないアニメ。でもこういうの作られる隙間がなくなったら日本のアニメは終わりだよとは思えた。OPアニメーションはほんとにカッコいい。今年のベストOP候補。

 

 ちはやふる3

 競技アニメの面白さはその競技独特の大会形式に演出が引っ張られていく所にあって、ちはやアニメはそれが楽しめる典型例。2期から6年。本当によく作ってくれた。2クールが早過ぎた。願わくば原作と共に最後までやって欲しい。

 

 映像研に手を出すな

 アニメ創作にまつわるどうこうよりも、「アナクロ遺産が眠っているマンモス学校(とその周囲)」という存在に引っ張られて楽しく見れた。なのでアニメ作るより製作環境やロケーションを探索してる所の方が好き。

 

 22/7

 OPの曲や1話で「ヤスシって…」とダメな雰囲気が漂ったが、ちょっと湿っぽい各キャラスポット回が面白くて一転、毎週楽しみなアニメに。アイドルアニメに「ライブパフォーマンスのカタルシスをエピソードの各部が支えていく様」とは別な「何か」を求める自分にとって、湿っぽいドラマのその湿度が「何か」として機能したのか。この期に及んで未だ死ねずにいるアイドルアニメ侮りがたし。

 

球詠

 要求コストが明らかに高い野球という題材を地に足ついたリソースでちゃんと見せられているのは、ここで何か高度な事が行われている証拠と見た。その演出と菊田幸一氏(このすばのキャラデザで知られる)の独特のキャラデザがアニメートしていく様は、崩れや空白をポジティブなものに転化していく力を持っている。いわゆる「良い漫画の良いアニメ化」とは一味違うバランスで成立している良作。スタジオA-CAT作品は近年良作続きなので要注目。

 

サクラ大戦 the Animation

 1話見た時点では案外いけると思ったんだけど…。コンテになかの☆陽氏(自分が好きなのは閃乱カグラ2期5話のコンテでの仕事…今年はウルトラマンZでのコンテ仕事が代表作か)参加の2話のバトルの設計など、画的に面白い所はぽつぽつあった…のだが。

 

邪神ちゃんドロップキック

 レガシー的リミテッドアニメギャグ演出の粋を集めたギャグアニメの2期。基本要素が出揃ってお披露目要素が少なくなりやや飽き始めて来たのも否めないが、ふるさと納税が絡んだ無理矢理な地域観光展開が活路を開いたか。早くも3期が決定するその躍進ぶりに、逆に戸惑う。

 

プリンセスコネクト!Re:Dive

 世の期待度が高い原作のアニメ化に、金崎貴臣監督が割り当てられる時代が来てしまったか。これゾンもこのすばも主人公が独白含めてよく喋るアニメだったので、その辺の作品と比べるとこれは結構異色。

 流石にいろんな部分が胴に入ってるけど、サイゲ原作のアニメにはある枠を絶対に踏み越え(られ)ない感じがあって(一定の下世話さに踏み込めなかったり…)、それがこの監督に合っていたかというとどうだろう。純度が高すぎて自分は最後まで思い入れ切れない…というのは贅沢な感想か?

 


ラピスリライツ

 ゲームリリースを前提としたアニメ先行型メディアミックス。またアイドルアニメ?と思わせつつ、アイドルやるのがメインのつくりでもない。「この世界のアイドルは魔法が使える」がCMのコピーだった気がするが「この世界の魔法使いは時にアイドルになる」と言った方が良い。

 実は退屈になりがちな「みんなでゲームをプレイ」展開を別ラインとの並行で見せる5話など、多キャラ多ユニット制を楽しく見せるセンスが光る。はじめから個がきっちり立つより、全体がわちゃっとしながらそれぞれの存在がぼんやり立ち上がってくるタイプが好きな自分にはピンポイントなアニメ。名作妹ちょの監督がやってくれた感。温かいエピソードをピュアな目線で見守り続けるにはちょっと肉感的過ぎる気がするキャラ作画(全ユニット全メンバーのコスがノースリーブかオフショルダーだし)というバランスも好み分かれそうだが自分としてはツボ。

 自分が面白いと思ったスマホゲーアニメはその後ゲームが速攻サービス終了しがち(あかねさす少女、ぱすてるメモリーズ 他)だが、これはまだゲームがリリースされていないので安心。

 

モンスター娘のお医者さん

 性癖~な感じで進むかと思いきや、案外そういうパートは薄味で、基本的には地味なドラマが展開。性癖~な感じでは出なかったであろう牧歌的テイストに好感を持ったが、牧歌的過ぎて刺激に欠けたきらいもある。なんだか惜しかった作品。

 キャラデザの加藤裕美氏はファンタジスタドールの時もそうだったが、描く人が死なないか心配になるくらいキャラ原案のディティールをアニメキャラデザにも残すなぁと思った。

 

放課後ていぼう日誌

 絶対防衛レヴィアタンのキャラデザ…というか動画工房作品をはじめとした多数のアニメでハイテンションなOP・EDアニメーションに関わり続けてきた大隈孝晴氏の初監督作。

 近年の動画工房のアニメは「カタい」という印象(好きな動画工房アニメは恋姫†無双11eyes)が強くてあまり見れない事が多いのだが、これは海釣りという個人的にすごく興味のあるアクティビティに、ディティールをきっちり抑えつつ取り組んでいくアニメなのでするっと見れました。キャラクター作画にちょっとクセがあるのもいいアクセントになっている。EDの歌詞の気が効いてる感じがちょっとムズっとするんだがこの気持ち分かる人おる?

 この前のダンベルも見れたので、自分が今の動画工房のアニメを見れるかどうかは結局題材次第という事になってしまうのかもしれない。

 

彼女お借りします

 マガジンラブコメがせめてきたぞっ!と防御態勢に構えつつ見始めたが、現代的な洗練もちゃんと有したキャラ作画のなかでベテランを中心とした演出陣が半ば懐かしさも漂うコミカル演出(巨大化するリボン・突然ツッコミ始める熱帯魚などなど)で遊ぶ、マガジンラブコメとしては珍しいテンションのアニメ化がなされており、色々とアレな恋愛?模様を見せられているのにも関わらずなんだか爽やかな気分に。

 

ジビエート

 未だにこういうのブチ込んでくるから全くアニメってやつは。初回OPから既に漂う規格外感。あまりに感染力が強すぎて他のアニメでというか生活の中で何を見てもジビエートを思い出すように(例:「●RECジビエートじゃん」「カツカレー→ジビエートじゃん」「光る棒→ジビエートじゃん」「関越道→ジビエートじゃん」)。OPもヘビーローテーションした。
 何がヤバいかいちいち語ってるとキリが無いし、他所でも散々語られてるので今更何も付け加える必要ない気もするが、所々背景だけは妙に丁寧で関越道の無人と化したサービスエリアの駐車場とか関越道のトンネルとかの入口とかの質感は出ていた(ので逆に笑ってしまった)という事は言っておきたい。あとワーゲンバスが出てくるアニメは今までいくつかあったけどこんな奴ら(ほぼヤクザ)が中に乗ってた作品は他に無え!

 

魔女の旅々

 キノの旅?と思わせつつその手の話はオチに一捻りも二捻りも足りない感じだし、コメディ回で90年代諸国行脚系ラノベ(だけではない)アニメ風のテイストを匂わせつつも、それが魅力というにはいい話は普通にいい話過ぎる*1…丁寧に作ろうとしている事が逆に「色々とやろうとして中途半端」な印象を増幅してしまっているような。細かいアクション(芝居含む)の組み立ての軽快さや、本渡楓ボイスのエロさで最後まで見る事は出来た。

 

いわかける

 あのCHEATING CRAFT(9話は10年代アニメを代表する狂ったエピソード)を送り出したスタジオ・BLADEの初30分アニメ。アナクロさがツボに入るタイプの人をスベるのを恐れずに狙い澄ましたかのようなつくりで、画・演出の方向性共にどちらかといえば好物。ギリギリ「スベってる」寄りなのではというキャラ造形などムズムズする部分はあったが、特徴的な大会形式に作劇が寄っていく所など、競技アニメとしてのツボは抑えてあった。演出力でギリギリなんとかまとめる最終回は「テレビアニメの最終回」感に溢れていてナイス。

 作品のテイストを象徴するかのようなこれまた懐かしい雰囲気のOPアニメーションとEDアニメーションには完全に射抜かれた。鈴木愛奈はどこかにアナクロ要素を含む作品のテーマ曲ばかり歌っている気がするな。そしてED原画のアニメーター小澤和則氏はいくらなんでも今年(も?)描き過ぎで、原画に名前見ないアニメあった?とすら思える。

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

 ラブライブの名を冠しつつも全体的にシュッと今風になって「こうなったかー」と感心はしつつも、葛藤→パフォーマンス収斂型なその盛り上げ方(いや個人的に苦手なだけでアイドルアニメとしてはそれが普通なのだが)には毎回「いや、まだ俺お前らの事よく知らんし…」と感情がついていかない部分も多し。その辺「特に下準備なく初めから思い入れてもらえる事前提」なものを感じてしまったが、人気シリーズに連なる作品としてはその辺は気にしない作り方が正解という事なのか?面白い画面が連続する回(10話*2)もあり、その辺は楽しめた

 

アクダマドライブ

 こんなのダンガンロンパ苦手おじさんが見れるはずないだろ…と思ったが、どんなセンスを見せるにしろ勿体つけずに次へ次へと進んでいく潔さがあり、最後まで見守れてしまった。最終回近くで精神or電脳世界にinチックな絵面が頻出したのは少しガッカリしたけど、最終回にここまで何かが(ちゃんと)終わる空気感がある作品も最近珍しかったのでよし。単発劇場アニメで作るプランも想定されてた企画だったのでは?という気もする。

 

禍つヴァールハイト

 目立った特長のない舞台設計とどのキャラを1話限りのモブと言われても信じそうなキャラ造形というフックの無さ…表面的な創意を見せつける気があんまり無さそうなのと「先に何かあるのでは?」という勿体つけた感じで見せようとしてくる感じは、上のアクダマドライブと対称的な作品なんではなかろうか(「単発劇場アニメも視野に入れてたのでは?」と思わせる所は同じ)。

 その「何かあるのでは?」感にまんまと最後まで付き合ってしまったが、終わり方もこれまたアクダマドライブと対称的に全然何かが終わった感じはなく…

 でも、このご時世にいわゆる「キャラ立て」的なものとは無縁にキャラたちがイキイキしてるバランスは個人的には好みだったし、そこまでのプロセスを勿体つけた割に人の死の余韻の描き方が異様にドライだったり、ツダケンがそんなに重い扱いじゃなかったり、長縄まりあがやっぱり良かったり、この作品特有の空気感は味わえたのでそこまで損した感じはしない。

 

 呪術廻戦とD4DJは未完なので2021年扱いに。終わってたらD4DJがこのシーズンベストだったか。

まとめると今年特に良かったのは

ちはやふる3
・22/7
・球詠
・ラピスリライツ

あたりか。ジビエートは特別賞。こうして見ると今年は「これは俺のアニメだ!」というヘンな気分にさせてくれるタイプの面白さのアニメは少なく(近いのは球詠か)、手堅く面白いものが多かった印象。

*1:胸糞エピソードも諸国行脚アニメ風エピソードも傑作な叛逆性ミリオンアーサーというアニメが去年あったのだ

*2: